「好きなんだ」


 クローヴィスが言う。ロゼッタは思わず目を見開き、ゴクリと息を呑んだ。


「ロゼッタ嬢のことが、好きだ」


 ロゼッタがなにか言う前に、クローヴィスが言葉を重ねてくる。
 こんなにはっきりと想いを言葉にされたのははじめてだった。もちろん、「本気だ」とか「好きな人」だとか「口説いている」と言われたことはあるけれど、今回は明らかに言葉の重さが違っている。


(だったら、わたくしも、きちんとお返事をするべきだわ)


 ロゼッタはクローヴィスを見つめ、口を開く。


「殿下、わたくしは――」

「頼むから断らないでくれ」


 けれど、ロゼッタがこたえる前に、クローヴィスがそう懇願してきた。クローヴィスはおずおずとロゼッタに手を伸ばし、ゆっくりと縋るようにして抱きしめてくる。


「クローヴィス殿下、けれど」