(もしかして、わたくしがお金と男性の話をしているとき、他の方もこんな気持ちになっているのかしら?)


 ロゼッタが少しだけドキドキしていると、ランハートがクスリと小さく笑った。


「だけど、ライラ様と出会って――自分の運命に戸惑いながらも前を向くライラ様を見て、少しずつ気持ちが変わっていきました」


 彼の視線の先には、セリーナと談笑しているライラがいる。ロゼッタも一緒になってライラを見つめた。


「十六年間もただの平民として過ごしてきた女の子が、いきなり未来の王様になれと城に連れて行かれて、傷ついたり戸惑ったりしている様子を見て最初は気の毒だと思いました。けれど、僕のそんな気持ちを綺麗さっぱり吹き飛ばすほど、ライラ様は強かった。平民として生きてきた自分だからこそ、王になってできることがあるんじゃないかと笑うライラ様は美しかった。そんなライラ様に、僕は惹かれていったんです」


 ランハートが言う。こちらの視線に気づいたのか、ふとライラがこちらを向いた。すると、それまで王族として凛とした美しい表情を浮かべていたライラが、拗ねたような、困ったような笑みを浮かべる。ランハートがふわりと目元を和らげた。