(殴られたら傷がついてしまう)


 さすがにこれはまずい。挑発をしすぎたと後悔したところでもう遅そうだ。
 ロゼッタがオロオロと視線を彷徨わせていたそのときだ。


「せっかく綺麗な顔なのにもったいない」


 侍女の背後からそんな声が聞こえてくる。ロゼッタが恐る恐るそちらを見ると、見覚えのない男性が立っていた。


「え? あっ……これは、その」

(一体いつからいらっしゃったのかしら?)


 そこにいたのはクローヴィスにも劣らないほど美しい男性だった。小麦色に近い金色の長髪に水色の瞳。年齢はロゼッタより数歳上だろうか? そこはかとなく大人の色気が漂っている。――少しだけウィルバートに似ている、とロゼッタは感じた。