そう返事をしたロゼッタだったが、実のところウィルバートの屋敷についてはすでに調査済みだ。

 王都の郊外に建てられた大きなお屋敷で、貴族の邸宅ともまったく引けを取らない。ただ、装飾は比較的少なめで、非常にスタイリッシュな造りとなっており、周りとは一線を画している。

 ついでに言えば、西の海沿い、国境沿いの山間地方に一軒ずつ別荘を持っており、彼の財力を伺い知れる。


「ゆっくりくつろげる場所があるのって重要だからね。内装や使用人の質には結構こだわってるよ」

「素敵ですわ!」


 ぜひともお邪魔してみたい、という言葉を必死にのみこみ、ロゼッタはギュッと目をつぶる。
 恋愛において駆け引きは重要だ。本音をすべてさらすわけにはいかない。先日であったばかりのライノアには『ロゼッタはあけすけすぎる』と思われているようだが、きちんと己を使い分けているのだ。


「――いいの?」

「え?」

「本当は屋敷に来てみたいんでしょう? 今日のうちに約束を取り付けなくて大丈夫?」


 余裕たっぷりに微笑まれ、ロゼッタの顔が赤くなる。