(ないものねだりをしたって、仕方がないのに)


 どうしてそれがわからないのだろう? しかも、ロゼッタはこの侍女を苦しめようと、なにかをしたわけではない。すべて男性側が勝手にしてくれたことだ。それなのに、こんなふうに文句を言われる筋合いはない。ロゼッタはぐっと姿勢を正した。


「目に見えないものに、なんの価値がありますの?」

「はあ?」

「努力は美徳です。頑張ることに価値はあります。けれど、その頑張りが誰にも見えない形だというのに『見てもらえない』『わかってもらえない』というのは違うでしょう?」

「なっ……!」


 侍女が瞳を吊り上げる。ロゼッタはふぅと息をついた。


「わたくしは男性にとって魅力的に見えるよう、努力をしてきました。いかに可愛く見えるか、声をかけたくなるかを日々研究して、ここまで来たのです。あなたと違って、目に見えるものを大事にした、そういう努力を選んだだけのこと。それを尻軽、悪女と称されるならば、別にそれで構いません。あなたはいつまでも『気づいてもらえない』とウジウジして、そこでうずくまっていればよろしいのでは?」

「バカにしないでよ!」


 侍女が右手を振り上げる。ふと見れば、侍女の指に大きな宝石が埋め込まれた指輪がはめてあった。