「ちょっとこっちに来て」


 侍女から腕を引かれ、ロゼッタは黙ってついていく。人気のないバルコニーについたところで、侍女は再びロゼッタに向き直った。


「どうして私じゃないの? 私のほうがずっと、殿下のことを想っているのに! そのドレスだって、もしかしたら! ……もしかしたら、私に贈ってくださるんじゃないかって思っていたのに」

「まあ……」


 聞いていて、なんだか気の毒になってくる。ロゼッタは侍女の顔をじっと見つめた。


「そのネックレスだってそう! 別の男性――トゥバルト様からいただいたものでしょう?」

「ええ、まぁ……」

「本当に最悪っ! どうして男性はこんな顔だけの女がいいわけ? どれだけ勉強をしても、努力しても、そういう部分はちっとも見てもらえない」


 侍女は地団駄を踏まんばかりの勢いで悔しがっている。対するロゼッタの心は、完全に冷めきっていた。