「殿下がドレスを発注したのに感づいて、急いで用意をしたんだ。今夜のドレスに似合うようで、よかったよ」

「トゥバルト様……!」


 ロゼッタは急いで視線を落とす。胸元で大粒のルビーが輝いていた。


「わたくしがいただいてもよろしいのですか?」

「もちろん、ロゼッタ嬢のために用意した宝石だ。君にしか似合わない。……だろう?」


 トゥバルトが満足そうに笑うと、ロゼッタは瞳を輝かせた。


「ありがとうございます! そう言っていただけて、とても嬉しいですわ!」

「それじゃあまた、会場で。ロゼッタ嬢と踊れるのを楽しみにしているよ」


 トゥバルトが颯爽とその場を去る。


「――お兄様が不機嫌にならなきゃいいけど」


 部屋からそっと顔を出したセリーナがボソリとそうつぶやくのだった。