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 ウィルバートが選んだのは、王都に住んでいれば誰もが耳にしたことのある有名店だった。一年先まで予約が埋まっているらしく、行きたくても行けない店ナンバーワンと評判だ。


「もしかして、事前に予約をとっていらっしゃいましたの?」

「ううん。オーナーが知り合いなんだ。頼めばいつでも席を用意してくれるんだよ」

「素敵! さすがはウィルバート様ですわ!」


 凡人には決して得ることのできないツテと財力、交渉力。ロゼッタは感激しつつ、嬉しそうに店内を見回している。


(これよ! わたくしが望んでいるのはこういう生活なのよ!)


 改めてウィルバートをターゲットとしてロックオンし、ロゼッタは身を乗り出した。
 

「ウィルバート様は外で食事をなさることが多いんですか?」

「そうだね、仕事で外に出ていることが多いから。だけど、早く帰れる日には家でも食事をしているよ」

「そうでしたか……きっとご自宅も素敵なところなんでしょうね。想像していたら楽しくなってしまいますわ」