「そうかもしれないけど……」

「俺の妃になる女性なら、この程度のことは自分で対処できなければ話にならない。毎回泣きつかれては困るし、公務にも支障が出る……だろう?」

「……つまり、お兄様はロゼッタを試しているってわけ?」

「有り体に言えば、そういうことだね」


 クローヴィスの返事を聞いて、セリーナはそっと頭を抱えた。


「今回の件で、やっぱり俺にはロゼッタ嬢しかいないと感じたんだ」

「ああ、そう……」


 常にニコニコと笑い、社交辞令や嫌味を理解すらしていないように見えたクローヴィスだが、本当はすべてを理解したうえで、真逆の態度を取っていたらしい。
 だとすれば、クローヴィスにとってロゼッタが理想的な女性だというのもうなずける。感情ではなく打算――ロゼッタの場合はお金だが――で動く女性は、かえって安心できるのだろう。


「このまま放置して、ロゼッタに嫌われても知らないからね」

「平気だよ」


 ロゼッタにとって、なにが一番大事なのかはわかっている。クローヴィスは不敵に微笑むのだった。