(面倒くさいですわね……)


 だから感情で動くな、というのに。
 ロゼッタは静かにため息をついた。



「――ねえ、お兄様。ロゼッタたちを放っておいていいの?」

「うん?」


 その頃、セリーナとクローヴィスは別室からロゼッタたちの様子を伺っていた。
 クローヴィスの侍女がロゼッタに対して嫌がらせをしていることは、現場を見ずとも察せられる。セリーナとしてはそろそろ、そういう行動は慎むようクローヴィスの侍女に伝えたいところだったのだが。


「ロゼッタ嬢ならこのぐらい問題なく対処できる。平気だろう?」


 肝心の侍女の主人、クローヴィスがこの調子なのだ。セリーナはムッと唇を尖らせた。


「けれど、お兄様のせいで難癖をつけられているのよ? ロゼッタはなにも悪くないのに」

「わかっているよ。けれど、ロゼッタ嬢は決して弱くない。色々言われて面倒くさいと思うだけで、傷ついてすらいないと思うよ。それに、俺が助け舟を出すと、侍女の嫌がらせがエスカレートしそうだしね」


 クローヴィスはそう言ってクスリと笑う。セリーナはクローヴィスをじとっと睨みつけた。