「感情を基準にして動くと、ろくなことがございませんわよ?」

「は?」


 ロゼッタの言葉に、侍女は大きく首を傾げる。


「人の気持ちなんて、ちょっとした出来事で揺れ動くのです。それなのに、一時の感情で突き進んでは、あとから恥ずかしくなったり、後悔したりするでしょう?」

「わ、私はそんなこと……」

「ない、と言い切れます?」


 侍女がウッと言葉を噤むと、ロゼッタは静かに微笑んだ。


「だったら、あなたはなにを基準にして動くのよ?」

「お金です」

「は?」

「わたくしにとってはお金がすべてなのですわ」


 ロゼッタがそう断言する。侍女は目を丸くした。