「さっさと来なさい。クローヴィス殿下がセリーナ殿下とお茶をご一緒したいそうだから二人分準備してもらったの」

「ありがとうございます。助かりますわ」


 自分の仕事が減るのはいいことだ。ロゼッタが微笑むと、侍女はムッと眉間にシワを寄せた。


「あなた、侍女としての矜持はないの? 頼まれた仕事もろくにこなせないなんて、恥ずかしいと思わない?」

「そりゃあ、まごついて申し訳ないとは思いますが、恥ずかしいとは思いませんわ。頼れる人は存分に頼りますし、セリーナ殿下もきっと『わたくしらしい』と笑ってくださるはずですから」


 侍女は不機嫌なのを隠す様子もなく、セリーナたちの部屋へと進んでいく。だが、扉を開ける瞬間にコロッと態度を翻し、満面の笑みを浮かべた。


「クローヴィス殿下、お茶をお持ちしました」


 上品で落ち着いた雰囲気。なるほど、侍女としての矜持とはこういう態度をいうのだろう。
 侍女は感心しているロゼッタを小脇で小突きながら「早くセリーナ殿下を連れてきて」と言う。言われた通り、ロゼッタはすぐにセリーナを連れてきた。