セリーナに用意された部屋は落ち着いた雰囲気の豪華な一室だった。クローヴィスとは隣の部屋で、行き来がしやすくなっている。


 今回の公務の目的である王太女とは明日対面することになっており、今日はもう食事をして休むだけだ。セリーナにしっかりと体を休めてもらうため、ロゼッタはまずお茶の準備にとりかかった。


(やっぱり色々と勝手がわからないわ。城外で働くなんてはじめての経験だもの)


 どこで、誰に、なにを頼めばいいかなど、事前に手引をもらっていたものの、いざというときに上手く体が動かない。ロゼッタが困っていると、背後からフッと嘲るような笑い声が聞こえてきた。


「これだから顔だけの女性は。本当に使えないのね」


 見れば、クローヴィスの侍女がティーポットを運びながら口角を上げているところだった。


「それは、まあ……申し訳ないです」


 現状、言い返す言葉がないので、ロゼッタは素直に頭を下げる。すると、クローヴィスの侍女はフンと鼻を鳴らした。