「さっきの文官、素敵だったわね……」


 けれど、男性と接する機会の乏しいセリーナにはそうとわからなかったようで、ポッと顔を赤らめていた。


「そうですわね」


 とはいえ、セリーナの好印象を壊すのは忍びない。ロゼッタは笑顔で同意をする。


「……ちなみになんですけど、王太女殿下と婚約したのは先程の男性ではないのですか?」

「いいえ、別の男性よ。ランハート様とおっしゃるんですって。おそらくバルデマー様も婚約者候補に入ってはいたのでしょうけど」

(でしょうね)


 と、ロゼッタは心のなかで返事をした。
 あれほどの野心を抱えているのだから、王配候補に入っていないはずがない。ロゼッタは自分の見る目は正しかったと内心で小さく笑った。