トゥバルトのおかげで、休憩後はロゼッタは別の馬車に乗ることができた。馬車には女官が二人同乗している。普段接点がないため、なにを話せばいいのかまったくわからない。
 幸い、彼女たちは会話を楽しもうという気はないようだった。女官の一人は公務に関する資料を読みふけっているし、もう一人の女官は窓の外を眺めながら、ロゼッタたちと目を合わせないようにしている。……いや、時折ロゼッタをジロリと睨んでいるようだが、睨むだけでなにか言われたりはしなかった。


(別に構わないけど)


 こういう視線には慣れている。元々ロゼッタは女性に好かれるタイプではないからだ。むしろ、一緒にいてくれるクロエが珍しいのだと、ロゼッタはきちんと自覚している。
 けれど、言いたいことがあるならば、直接言ってくれればいいのにと思わないでもない。ロゼッタは素知らぬふりをしながら馬車に乗り続けた。