「他でもないロゼッタ嬢のためだからな。それに」


 トゥバルトはそっと身をかがめ、ロゼッタの耳元に唇を近づける。


「あまり君をクローヴィス殿下に近づけたくない」

「まあ……!」


 照れたように微笑むトゥバルトは、普段の余裕たっぷりな雰囲気とのギャップが大きく、ロゼッタはついついときめいてしまう。


(いけないわ。わたくしが愛しているのはお金だけなのに)


 心の中でぶるぶると頭を振りながら、ロゼッタはにこりと微笑んだ。


「ありがとうございます。そんなふうに言っていただけて嬉しいです」

「滞在中はぜひ、一緒に食事をしよう。もちろん、お互いの仕事の都合がついたらにはなってしまうが」

「喜んで! ぜひ! ぜひご一緒したいです!」


 ロゼッタが身を乗り出して返事をすると、トゥバルトはまた屈託ない笑みを浮かべた。