「ロゼッタったら、お兄様の誘いを断りきれなかったのね」


 馬車には既にセリーナが乗り込んでおり、面白そうな、けれど憐れむような表情でそう声をかけられた。


「――殿下のお兄様、押しが強すぎませんか?」


 しょんぼりと肩を落とすロゼッタに、セリーナは思わず噴き出してしまう。


「似たもの同士、ってことなんじゃない? 私から見たら、ロゼッタも似たような感じだと思うけど」

「似ている? わたくしと? まさか」


 ロゼッタが目を見開くと同時に、クローヴィスが馬車に乗り込んでくる。クローヴィスはニコニコと大層上機嫌な様子で、セリーナはげんなりとため息をついた。


「二人とも猫を被っているというか、上手く本性を隠しているし。とにかく押しが強いし」

「素晴らしい褒め言葉をありがとう、セリーナ」


 クローヴィスが目を細める。セリーナは再び、盛大なため息をついた。