「あれから、殿下のこともきちんと考えております」

「まあ、そうだろうね。でも、他の男のことも見ている。俺に対する以上に……だろう?」


 クローヴィスはそう言ってロゼッタを真っ直ぐに見つめてくる。その瞳のあまりの熱量に、ロゼッタは思わず視線をそらした。


「それはそうと、そろそろ出発の時間だよ」


 クローヴィスがロゼッタの手を取り、城内へと連れて戻る。彼が向かったのは一際豪華で作りのしっかりした一台の馬車――クローヴィスとセリーナが乗る馬車だ。


「それでは殿下、道中どうぞお気をつけて」


 ロゼッタは使用人たちの乗る馬車へ向かおうとしたが、クローヴィスはなおもロゼッタの手を離そうとしない。戸惑うロゼッタを見つめながら、クローヴィスはそっと目を細めた。


「ロゼッタ嬢が乗るのは俺たちと同じ馬車だよ」

「……え?」


 その瞬間、ロゼッタの口の端がピクリと引きつった。