(本当にどこまでもムカつく人)


 ウィルバートの後ろ姿を見つめつつ、ロゼッタはなかなか動き出せない。未だに胸がドキドキと騒ぎ、しばらく落ち着きそうな気がしなかった。


「……楽しそうだね」


 とその時、背後から話しかけられ、ロゼッタはビクリと体を震わせる。


「ク、クローヴィス殿下」

「ウィルバート相手にあの距離を許しているんだ。俺が同じことをしても構わないよね?」


 後ろからギュッと抱きしめられ、ロゼッタの背中から変な汗が噴き出した。


「これは、その……」

「俺の本気を伝えたつもりだったのにな」


 クローヴィスの息が首筋にかかり、ロゼッタの肩がゾクリと震える。ロゼッタの反応に満足したのか、クローヴィスはロゼッタの頭をポンポンと撫で、ようやく解放してくれた。