婚活令嬢ロゼッタは、なによりお金を愛している!

「ねえ! 封筒をあなたに預けた男性はまだ城の外にいるのかしら?」


 声が上ずっているのを感じつつロゼッタは騎士にそう尋ねる。


「ええ。『待っている』とおっしゃってましたよ」


 騎士が返事をするやいなや、ロゼッタは城門へ向かって走り出した。ハイヒールがかかとに食い込み痛んだが、そんなことを気にしている余裕はない。
 城外に飛び出し、お目当ての人物を探すために視線を彷徨わせる。するとその瞬間、背後からふわりと抱きしめられた。


「こういう連絡はもう少し早くしてほしいな……間に合ってよかったよ」


 落ち着いたテノールボイスにロゼッタの胸が高鳴る。封筒と同じ香水の香りを強く感じ、ロゼッタは男性の腕を軽く抱き返した。


「まさか会いに来てくださるとは思いませんでしたわ」

「本当に? 俺はずっとロゼッタ嬢に会いたかったのに」

「嘘ばっかり」


 男性の言葉を噛みしめるようにして、ロゼッタはゆっくりと後ろを振り向く。そこには余裕たっぷりに微笑む実業家のウィルバートがいた。