(これで、ようやく自分の準備ができますわね)


 ロゼッタは伸びをしてから自分の部屋に戻る。それから、便箋とペンを手に机に向かった。


(本当は直接会っておきたかったのだけど、そんな時間は取れそうにないから)


 ふぅ、とため息をつきつつ、ロゼッタは静かに目を瞑る。
 ロゼッタが手紙を書いている相手は実業家のウィルバートだ。
 彼に子ども扱いをされてからひと月ほど、まともに連絡を取っていない。ウィルバートを見返すための自分磨きに加え、クローヴィスとの食事会や父親の件、それから今回の隣国行きが重なって、手紙を書く余裕がなかったのだ。


(なんて、あちらはもう、わたくしのことなんて忘れているかもしれないけど)


 ウィルバートにとって、ロゼッタはただ可愛いだけの子どもで、恋愛対象にすら入っていない。このままフェードアウトしても一向に構わない相手だろう。

 けれど、ロゼッタはそれでは嫌なのだ。