「もっと言えば、こうして直球で口説いているのに、中々いい返事がもらえていないんだ。だが、そこがまた魅力的だと思っている」


 すると、ロゼッタを逃がすまいとクローヴィスが追い打ちをかけてきた。ロゼッタはうっと口ごもった。


(どうしましょう? このままではトゥバルト様と結ばれるルートが潰えてしまいますわ)


 彼はロゼッタの結婚候補者の中でも一番のお金持ちで、身分的にも申し分ない相手だ。没落の可能性が圧倒的に低いからお相手として理想的で、現段階で脱落するのは絶対に避けたいというのに――と、ロゼッタが必死に考えを巡らせているさなか「へぇ……」とトゥバルトが小さく呟く声が聞こえた。


「クローヴィス殿下はロゼッタ嬢を気に入っていらっしゃるのですね」

「気に入っているのではない。好きだと思っているし、妃にと望んでいるんだ」


 ドキッと色んな意味でロゼッタの胸が大きく跳ねる。これまで平静を装っていたセリーナの護衛や侍女たちも、これには少しざわついた。


「ですが、ロゼッタ嬢からは現状色よい返事がもらえていない……と。それでは、まだ俺にも可能性はありますよね?」

「まあ……!」


 トゥバルトからの思わぬ切り返しに、ロゼッタは顔が赤くなる。