「セリーナは関係ないよ。ロゼッタ嬢は俺が一緒なことを喜んでくれないのか?」


 クローヴィスはそう言ってニコリと微笑む。


「え? ええと……」


 なんともこたえづらい質問をしてくるものだ。ともすれば、トゥバルトのロゼッタに対する好感度が一気に下がってしまうし、今後結婚候補として見てもらえなくなるだろう。なんといってもクローヴィスは王族で、彼と争ってまでロゼッタとどうこうなりたいと思うような人間はそういないはずだ。

 ふと見れば、クローヴィスはちらりとトゥヴァルトのほうを向き、その後でロゼッタの瞳を覗き込んでくる。彼は挑戦的な笑みを浮かべると、そっと目を細めた。


(なるほど。これが狙いでしたのね)


 クローヴィスはロゼッタがウィルバートだけでなく、トゥバルトを狙っていることも把握していたのだ。だからこそ、二人が急接近するのを防ぐため、今回の公務に同行することを決めたのだろう。

 だとしたら、ロゼッタも本気で対応を考えねばならない。