(嬉しい! この機会に、なんとしてもトゥバルト様との距離も縮めなければ!)


 隣国へ行くのは仕事だが、おそらくは自由時間もあるだろう。その際にトゥバルトと二人きりになれるチャンスもあるはずだ。絶対にものにしなければ、とロゼッタは意気込む。


「そうそう。いくら非公式の訪問とはいえ、外交の経験が乏しい私だけじゃ心もとないでしょう? それで、王室からもう一人、隣国に行くことになっているのだけど」

「もう一人?」


 と、セリーナの部屋の扉が勢いよく開く。


(ク、クローヴィス殿下?)


 ロゼッタが驚きに目を見開くと同時に、クローヴィスが微笑む。まさか――と思ったその時、彼はロゼッタの前に跪く。


「ごきげんよう、ロゼッタ嬢。セリーナと一緒に、俺も隣国に行くんだ」


 予感的中。


(はめられた――!)


 と、ロゼッタは唇を震わせた。