ロゼッタは侍女用の控室に花束を片付けると、セリーナに許可を得てからトゥバルトを案内する。


「あらトゥバルト、なんだか久しぶりね」

「お久しぶりです、セリーナ殿下」


 二人は元々知り合いらしく、親しげな雰囲気で挨拶を交わす。


「お父様から、今回の仕事はあなたと一緒だと聞いて、とても心強く思っていたの」

「それは光栄なことでございます」

「十年ぶりぐらいかしら? あなたが私の近衛騎士をしていた頃が懐かしいわ」

(近衛騎士? トゥバルト様がセリーナ殿下の?)


 どうやらセリーナは、ロゼッタたちに状況が伝わるようあえて、トゥバルトが過去に自分の近衛騎士だったことに言及してくれたようだ。


「そうだわトゥバルト、こちらは私の侍女の――」

「ロゼッタ嬢のことは存じ上げております。以前夜会でお会いしまして」

「さすがロゼ――いや、そうだったの」


 セリーナはロゼッタが自分をトゥバルトに紹介してほしがるだろうと思ったらしい。なにも言わずとも紹介をしてくれようとしたのだが、トゥバルトの返事に面食らってしまった。