「聞きました、クロエ? 面と向かってそんなことを言うなんて、ひどい人だと思いません?」

「まあまあ、いいじゃないの。変に誤魔化されるより、ロゼッタも楽でしょう? ロゼッタにとっては、ライノア様は婚活対象じゃないんでしょうし」

「そりゃあ、そうですけど……」


 別に、怒っているわけじゃない。なんなら、そんなことを言われたのははじめてで、おかしくて笑いがこぼれてしまうぐらいだ。
 とはいえ、苦手な女性を助けざるを得なかったライノアに申し訳なさを感じて、なんだか胸のあたりがつっかえるような感覚がする。


「まあ、それは冗談として」

「本当に冗談なんですの?」

「……冗談として。今回のことは、気にする必要はないと思います。僕はあなたに大して興味もないので、すぐに忘れてしまうでしょうし。ロゼッタ嬢も、忘れてしまえばいいのではないですか?」

「まあ……」


 言っていることは相変わらずひどい気もするが、なんだかロゼッタの気持ちが楽になる。