「当たり前ですわ」


 ロゼッタは笑う。自分自身がキラキラしていたいから。そんな自分が好きだから。嫌なことなど一つもないといった表情でロゼッタは堂々と胸を張るのだ。


「ロゼッタ! もう体は大丈夫なの?」


 寝室から出て二人の前に顔を出すと、クロエが心配そうな表情でロゼッタを見つめる。


「ええ、もちろん」


 本当は、完全に大丈夫なわけではない。
 それでも、今のロゼッタに必要なのは、落ち込むことでも不安に苛まれることでもない。無理矢理にでも理想の自分でいることだった。
 そのことに気づいたキッカケがライノアのひと言というのは癪だが、感謝はしなければならないだろう。


「……相変わらず、元気そうですね?」

「そうでしょう?」


 そう言って互いに笑ったものの、なぜだかライノアには本当の気持ちを――虚勢だと見透かされているような気がしてくる。


(けれど、いいでしょう?)


 それがロゼッタ・クロフォードという女なのだ。
 ライノアはどこか困ったように笑った後、「ええ、ロゼッタ嬢らしいです」と満足そうに目を細める。その瞬間、ロゼッタの鼓動がトクントクンと早くなり、ロゼッタは思わず下を向く。


(なに、これ)


 おそらくは今、顔が赤くなっているに違いない。けれど、そんな状態に気づかれたくなくて――自分でも気づきたくなくて、ロゼッタは「あらそう」と素っ気なく返事をするのだった。