(それにしても、ここはどこなのでしょう?)


 ロゼッタが横になっている寝台は、シンプルだが造りがしっかりしているし、大事に扱われていることがよくわかる。周りの調度類も品がよく、色合いも揃っていて、落ち着いた印象だ。あんな街中に、こんな形で休憩ができる場所があるとは……。


「それにしても、素敵なお住まいですね! 街から近いですし、すごくオシャレだと思います!」


 と、クロエの声が聞こえてきた。
 どうやらここはライノアの家らしい。寝室と隣の部屋が近いことから、一般的な貴族の屋敷のような大きさはない様子だ。


「無理して褒めなくていいですよ。ロゼッタ嬢たちが普段接している男性の屋敷とはかなり違っているでしょう?」

「無理なんてしてません! そりゃあ、私――というか、ロゼッタはお金持ちが大好きですけど、私はすごくいいと思います。地に足がついているというか、堅実な感じがしますし。私自身、そんなにいい生活を送っているわけじゃありませんから」


 どこか焦ったような声のクロエの言い訳が聞こえる。ライノアがクスリと笑った。


「本当ですって! 侍女の仕事って華やかですけど、お給料はそんなに高くありませんし。私たちが暮らしている部屋だって、狭いし古いし」

「別に、疑っているわけじゃありませんよ」


 ライノアが言う。……少しの沈黙。ロゼッタはなぜか、クロエが嬉しそうに微笑んでいる様子が想像できた。