「僕に運ばれるのは嫌かもしれませんが、このままここにいるよりはマシでしょう? 『勝手に触れないでほしい』とか『放っておいてほしい』といった恨み言なら後で聞いてあげますから、今は辛抱してください」


 まるで幼子を宥めるような表情でライノアが言う。


『すまない、ロゼッタ。本当にすまない』

(――うん)


 なぜだろう? ロゼッタの胸が少しだけ温かくなった。


***


「――本当に助かりました。なんとお礼を申し上げたらいいか」

「お礼を言われるようなことはなにも。偶然通りかかっただけですし」

「世の中には、困っている人がいても見て見ぬふりをする方がたくさんいるんですよ!」


 気づいたら、ロゼッタは見慣れぬ天井をぼんやりと見上げていた。クロエとライノアの声が遠くで聞こえる。体はやわらかいシーツで包みこまれており、石鹸とお日様の優しい香りにロゼッタは思わず深呼吸をした。