「ロゼッタ、ねえどうしたの? 大丈夫?」


 クロエがロゼッタの名前を呼ぶ。急に様子がおかしくなったことを心配してくれているのだ。


(お願い。わたくしの名前を呼ばないで)


 名前を呼ばれて、あの男に気づかれたくない。しっかりしなくては――そう思うのに、体がいうことを聞かない。
 嫌だ。苦しい。もどかしい。


(もう――消えてしまいたい)


 ヒュッとロゼッタの喉が強く締まる。


「ロゼッタ嬢?」


 と、その瞬間、誰かがロゼッタの顔を覗き込んだ。