ふたりだけの夜

 今はもう、19の秋。
 女子校だったり、出会いのない環境ならば、19歳で恋愛経験がないのは、さほど珍しいことではないだろう。
 しかし、私はずっと共学なのに。

 大学生になっても、いつもと同じパターンだ。
 今年もまた、何も始まることもないまま、人知れず失恋した。
 夏休みになってすぐ、仲間たちでキャンプに行くことになったものの、本当はそんな元気はなかった。
 ただ、失恋の痛手を紛らすのには丁度いい。
 キャンプの最中、少し疲れて、みんなの輪から離れた時、仲間の中でも一番親しい友達の尚から、突然の告白。
 正直、酷く混乱した。
「困らせたかな⋯⋯?」
 そう尋ねられても、返す言葉がすぐに見当たらなかった。
「無理しなくていいよ。いつか振り向いてくれたらいいな、ぐらいに思ってるから」
 尚が軽く笑い飛ばしてくれたから、私たちは気まずくなることもなく、仲間たちへの影響もなくて済んでいる。