ふたりだけの夜

 何故か、女友達からはモテモテだと誤解され、それは今でもそうなのだが、現実はまるで違う。
 なんといっても、私は、たった一度も恋が実ったことがないのだから。

 中学時代、初めて好きになったのは、バスケ部の先輩。
 その初恋の先輩が、私に気があるという噂をそれとなく聞いたので、密かに期待していた。
 ある日、日直で、焼却炉へゴミを持っていくと、
「違うよ。確かに蘭ちゃんのことは華やかで目を引く子だと思ってたけど、俺が好きなのはお前だよ」
 好きな先輩のそんな言葉が聞こえた。
 その言葉に、照れながら喜んでいたのは、部活で私のことをいつも可愛がってくれていた女の先輩だった。
 なんだ⋯⋯よく目が合うし、私のことを見ていたのかと思いきや、部活で私とよく一緒の先輩のことを見つめていたというオチか。
 初めての恋は、何も始まりもせず、人知れず散っていった。