「いつも、これ聞いてるの?」
 尚が言い、
「聞いてるというよりは、何となく流してるだけ」
「ふーん。テレビを見ないとは聞いてたけど、朝はこんな風に過ごしてるんだ」
 尚は、どうして、こんなに平然としているのだろう。
「なんか、元気ないな」
 元気がないのは、もうずっとだ。
「ねぇ⋯⋯こういうの、慣れてるの?」
「え?」
「だから⋯⋯女友達の部屋に泊まること」
「そんなわけないだろ。昨夜、俺はダメだって言ったじゃん。全く⋯⋯お互い、堅物同士だと思ってたのに、面食らったよ」
 それを言われると、酷く恥ずかしくなる。
「で、でも⋯⋯やたら平然としてるじゃない」
「まあ、別に何があった訳でもないし」
「え?」
 なんてことを言うのだろう。信じられないという思いにもなる。
「どうした?怒った顔して」
「尚にとっては、その程度のことだったんだ⋯⋯」
 自業自得なのに、なんだか酷く悲しくなった。