ふたりだけの夜

 それを聞いて、なんだかホッとした。
 たとえ、グループ内を乱さない為だとしても、好きじゃないなどと言って欲しくはなかったから。
 繋いでいた手に、ギュッと力をこめた。
「ん?」
「なんだか⋯⋯まだ信じられなくて。私の恋は、いつだって何も始まらずに終わってばかりだったから」
「おいおい⋯⋯俺だって、全く妬かないわけじゃないんだからな。彼女の過去の恋なんて聞きたくないよ」
「過去の恋って⋯⋯何もなかったのに」
「そうだけど、好きな子を悲しませた相手のことは、やっぱり許せないから」
 尚は立ち止まると、私のことを潰れそうなほど強く抱きしめた。
「く⋯⋯苦しい!」
「あ、ごめん」
 じっと見つめられ、
「どうしたら、俺がどれほど蘭のことを好きか伝わるのかと思って」
「ちゃんと伝わってるよ?」
「そうか?例えば、どういう時に?」
「最初に実感したのは⋯⋯やっぱり、本気で叱られた時かな」