ふたりだけの夜

 去年から、毎日のように一緒に過ごしていた友達なのに、ここまで立ち入ったことを話したことも初めてなら、どんな恋愛観を持っているのかを聞いたのも、全く初めてだった。

 夜遅くに、なりふり構わず縋りついて、二人きりで一夜を過ごしたのに何もなく、朝になって説教されているなんて、あまりにも色気がなさすぎて、まるで喜劇みたいだ。
 それでも、こんなにも真剣に向き合ってくれていることが、私には本当に嬉しくて、胸が熱くて⋯⋯。
「えっ!?俺、言い過ぎたかなぁ?泣くなってば、もう⋯⋯」
 不器用な手つきで、そっと私の涙を拭ってくれた。
「蘭がこんなに泣き虫なんて、知らなかった。今まで、泣いてるところを見たことがなかったから」
「なんか、ごめんね⋯⋯」
「いいって。それより、これからは何か思い悩むことがあったら、何でも話して欲しい。好きな子が辛い時に、心の支えになれないなんて、俺はすごく悲しいよ」