ふたりだけの夜

 一体どういうことか尋ねると、
「あんたがハタチになるまでは、どうにか隠すつもりだったけどね⋯⋯。実は、両親とも不倫してたのよ。それで、ついに母さんが男のところに行っちゃって」
 まだ正式に離婚はしてないんだけどね、などと、姉は続けて言っていたような気がするが、よく覚えていない。
 姉は結婚しており、未就園児の子供が居る。
 両親には、それぞれ恋人が居る。
 ひとりぼっちの私は、もう帰る場所を完全に失った。

 そのショックと孤独に耐えきれず、もはや、自分で自分がわからなくなり、尚に電話をかけ、会いたいと言い出したのだ。
 いつも恋にやぶれるだけでなく、帰る場所まで失ったなんて⋯⋯。
 気絶するまで飲み続けるつもりだったが、途中で尚に止められてしまった。
 どうしてもひとりになりたくなくて、惨めにもあんな風に縋りつき、いっそのこと、一夜の過ちでも犯してしまおうとさえ思った。