ふたりだけの夜

 失恋直後に、仲のいい友達からの告白。
 このパターンは、今までなかった。
 かつて、私に告白してきた人というのは、何故かいつもよく知らない人ばかりだったから。

 失恋で弱っていたタイミングでの告白に、心はグラついた。
 友達だと思っていたから、今まで全く意識したことがなかったが、よく見ると端正な顔立ちだということや、尚だけが明らかに他の男の子たちとは親しさの度合いも違うこと。
 おもむろに、そんなことに気付いた。

 私が今、これほどまでに酷く弱っているのは、失恋のせいだけではなかった。
 夏休みに帰る旨を実家に電話すると、姉が出て、今は帰ってこないほうがいいと言われ、最初は、
「そう?じゃあ、また改めるね」
 特に気に留めなかった。
 しかし、その後も、いつ電話しても姉が出て、帰ってこないほうがいいとばかり言い、明らかに何かを隠していることぐらい、鈍い私にもわかった。