中島くんはなぜか私にキスをせがむ

〜中島side〜

「中島君好きだったの。私と付き合ってください」

「ごめん。俺今好きな人がいるから…」

そう言って断るのは、高校に入って三度目くらいだ

同学年だという俺に告白してきた女の子は、泣き出しそうになりながら走って去って行った

俺には中学の時からずっと好きな子がいた

名前は杉野美冬

家の近所に住む幼馴染みたいな女の子だ

美冬は俺のことをそういう目では見ていなかったけど、俺にとって美冬はたった一人の身近な女の子だった

俺の両親は、俺が小学校の時、激しく降る雨の日に、対向車線から来るトラックとぶつかって死んだ…

俺がまだ小学校2年生の時だった

それから俺は母方の祖母に引き取られて、ずっと婆ちゃんと暮らしていた

婆ちゃんは厳しい時もあったけど、いつも優しくて俺は婆ちゃんが大好きだった

みんな俺の事を両親がいない可哀想な子という目で見たけど、美冬だけは違ってて、差別の目で見たり、可哀想な目で見ない、誰にでも分け隔てない優しい女の子だった…