恋人になった朝陽は、会社では一定の距離を置いてくれるけど、マンションに帰れば別人のように距離感が変わる。
「なぁ、梶岡の奴、りこにちょっかいかけすぎじゃないか?」
「やっぱり、あさひもそう思うんだ」
「やっぱりって、わかってるなら相手にするなよ。なぁ、俺達の仲、オープンにしようぜ」
隣でお皿を拭いていた人が、拗ねたように背後から肩を抱きしめてきた。
前に私が、女子社員に、主に梶岡ファンに嫌味を言われてる現場を偶然見つけた彼は、一言で黙らせた件があった。
それ以降、訳の分からないアプローチはなりをひそめたのだが、その代わり、クールな男を揶揄うことに目覚め、朝陽が近くにいるとわざとかまってくるのだ。
どうやら、いつもクールな感じで女を相手にしない朝陽が、私のことになると表情をわずかに変えるらしく、私達の関係に気がついたと教えてくれた。
そんなことは知らない朝陽は、我慢の限界らしく交際をオープンにしたいと愚痴る。
「…朝陽のファンが黙ってないよ」
彼氏のファンにあれこれ悪意を向けられたら、さすがにキツイ。
「ハン、そんな奴ら、黙らせるから心配するな」
「気持ちは嬉しいけど、それじゃ、余計に反感をかうと思う」
「じゃあ、どうするんだよ。俺の莉子なのに、守れないのか?」


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
