90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


私にとって迷惑な相手だ。しかし、向井さんだけは例外なのだろうか⁉︎

帰宅早々、向井さんからの呼び出しに忠犬のように従ってしまう。不機嫌顔で待ち構えている姿に反抗すればよかったと、現在、玄関ドアと向井さんに挟まれながら後悔している。

「梶岡の方がいいのかよ?」

何を言ってるんだこの人は。

「何か勘違いしてません?私、彼氏なんていらないっていいましたよね」

「わかってるよ。だけど、お前が他の男といるだけで、モヤモヤしてイラつく。俺の気持ち気づいてるだろう。俺じゃお前の彼氏になれないのか?」

「揶揄ってるんでしょ」

「揶揄ってなんかいない…いい加減、わかれよ」

真剣な目つきにドキッと心臓が大きく跳ねた。

わかってしまったけど…
わかりたくない。

また、前の恋のようになるのが怖いから…

「それ以上、聞きたくない」

「なんでだよ」

掻き抱くように体ごと捕われてしまった。

「…私に、もうかまわないで…お願い」

「無理だ。好きなんだよ…」

力強い声の後、信じられないぐらい、か細い声が切なくて心に響いていく。

何か言おうと口を開いては、ギュッと唇をしぼめるを繰り返していて、そんな私を見ていた彼は、苦笑して言う。