私にとって迷惑な相手だ。しかし、向井さんだけは例外なのだろうか⁉︎
帰宅早々、向井さんからの呼び出しに忠犬のように従ってしまう。不機嫌顔で待ち構えている姿に反抗すればよかったと、現在、玄関ドアと向井さんに挟まれながら後悔している。
「梶岡の方がいいのかよ?」
何を言ってるんだこの人は。
「何か勘違いしてません?私、彼氏なんていらないっていいましたよね」
「わかってるよ。だけど、お前が他の男といるだけで、モヤモヤしてイラつく。俺の気持ち気づいてるだろう。俺じゃお前の彼氏になれないのか?」
「揶揄ってるんでしょ」
「揶揄ってなんかいない…いい加減、わかれよ」
真剣な目つきにドキッと心臓が大きく跳ねた。
わかってしまったけど…
わかりたくない。
また、前の恋のようになるのが怖いから…
「それ以上、聞きたくない」
「なんでだよ」
掻き抱くように体ごと捕われてしまった。
「…私に、もうかまわないで…お願い」
「無理だ。好きなんだよ…」
力強い声の後、信じられないぐらい、か細い声が切なくて心に響いていく。
何か言おうと口を開いては、ギュッと唇をしぼめるを繰り返していて、そんな私を見ていた彼は、苦笑して言う。


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
