90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


もう何、送ってくれてるのよ…

大きくため息をつき、鍋にあるシチューとバケットをラップに包んだ後、自分がルームウェア姿だと思い出した。

女を捨ててるって思われたくなくて、結局通勤に着ていた服にまた着替えたのだった。

待ち構えていたようなタイミングで、すぐにドアが開いたが、向井さんはムスッとして何も喋らないし、シチューも受け取ってくれない。

「シチュー、持ってきました」

「…俺が連絡したら、いつでもすぐに来いって言ったよな!」

そうでしたね…
やっと喋ったと思ったら、私怒られるんですか?

「絵梨花が来ていたの知ってますよね。それで呼び出す方がおかしくないですか?大体、絵梨花にあいつん家行くのかってなんですか?黙ってそのままやり過ごしてくださいよ」

「……ギャーギャー、うるさい」

「はぁっ?都合が悪くなったから、逆切れですか⁈」

「キレてない」

「キレてるでしょ…あー、もういいです。兎に角、ご所望のシチュー持ってきましたから、どーぞ」

視線をそらして、こちらの顔も見ようとしない向井さんにイラだって、シチューの入ってる鍋を突き出せば、条件反射で彼は鍋を受け取っていた。

「じゃあ、鍋はいつでもいいので…おやすみなさい」