もう何、送ってくれてるのよ…
大きくため息をつき、鍋にあるシチューとバケットをラップに包んだ後、自分がルームウェア姿だと思い出した。
女を捨ててるって思われたくなくて、結局通勤に着ていた服にまた着替えたのだった。
待ち構えていたようなタイミングで、すぐにドアが開いたが、向井さんはムスッとして何も喋らないし、シチューも受け取ってくれない。
「シチュー、持ってきました」
「…俺が連絡したら、いつでもすぐに来いって言ったよな!」
そうでしたね…
やっと喋ったと思ったら、私怒られるんですか?
「絵梨花が来ていたの知ってますよね。それで呼び出す方がおかしくないですか?大体、絵梨花にあいつん家行くのかってなんですか?黙ってそのままやり過ごしてくださいよ」
「……ギャーギャー、うるさい」
「はぁっ?都合が悪くなったから、逆切れですか⁈」
「キレてない」
「キレてるでしょ…あー、もういいです。兎に角、ご所望のシチュー持ってきましたから、どーぞ」
視線をそらして、こちらの顔も見ようとしない向井さんにイラだって、シチューの入ってる鍋を突き出せば、条件反射で彼は鍋を受け取っていた。
「じゃあ、鍋はいつでもいいので…おやすみなさい」


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
