「さっきから誰?向井さん!」
画面をのぞく絵梨花は驚き、私の手からスマホを取り上げて恐ろしいぐらい素敵な笑みを浮かべる。
「どうして連絡先知っているのかな?」
「成り行きで連絡先の交換をしただけだって…」
「へー、『腹減った。シチュー食べたい』ですって、後は、『まだ、あの女いんの?早く帰せ。そして早く来い』って、わー、向井さんの部屋まで知ってる仲じゃん…『なんで、返事しないんだ』だってさ」
画面をこちらに向けて、ニヤッと笑う絵梨花に狼狽して言い訳が思いつかないでいる間に、勝手にスマホを操作して絵梨花からスマホが返ってきた。
「私は、邪魔者らしいから、帰るけど…向井さんいいと思うよ」
「ないない、それこそ、向井ファンが黙ってないよ」
「そうかな⁈向井さんなら守ってくれると思うけどな…梶岡さんと違って。私の分のシチューは向井さんに食べさせてあげなよ」
私の否定の言葉は聞き流されて、絵梨花は言うだけ言うと、帰って行った。
そしてまた、手にあるスマホが鳴った。
『待ってる』
その文の上に出ている絵梨花が勝手に送った文字に、絵梨花め…と怒りを覚えたのだ。
『焦らないで…待ってて(ハートマーク)今、あなたの為に準備してるのよ』


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
