「あのね…違うからね。絵梨花の勘違いだから」
「えー、怪しい。親睦会の日、2人の様子が変だったよ。向井さんには聞いてないことにするから、白状しなさいよ」
「ほんと、勘違いだからね。私がまだ、前の彼のこと引きずってるの知ってるでしょ」
「そうだよね。つい、莉子にも彼氏ができたのかと嬉しくてはしゃいでしまって、ごめんね」
「梶岡さんの件でも頭痛いのに、向井さんと同じマンションってだけでなんでもないんだからね」
昼休憩から総務に戻る途中、既に知れ渡っていた梶岡さんからの告白は、それをよく思ってない女子からすれ違い様に嫌味を言われ、仕事中も、あからさまな態度で接しられたのに、これ以上の厄介ごとはごめんだ。
出来上がったシチューをお皿に移し、カリカリのバケットを横に添えてテーブルに移動したあとを絵梨花がついてくる。
「だから、向井さんは彼氏じゃないの」
また、ポケットの中のスマホが連続してブーブーブッと鳴り誰だろうと、ポケットからスマホを出すと…ここでも私を悩ます人がいた。
でも、今は絵梨花の誤解を解く方が優先だから無視を決め込む。
「どうしたの?そんな難しい顔して⁈」
「ううん、なんでもない」
また、ポケットでブーブーブーとスマホが鳴り、もうっと、画面を見れば、やはり向井さんだった。


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