90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


「あのね…違うからね。絵梨花の勘違いだから」

「えー、怪しい。親睦会の日、2人の様子が変だったよ。向井さんには聞いてないことにするから、白状しなさいよ」

「ほんと、勘違いだからね。私がまだ、前の彼のこと引きずってるの知ってるでしょ」

「そうだよね。つい、莉子にも彼氏ができたのかと嬉しくてはしゃいでしまって、ごめんね」

「梶岡さんの件でも頭痛いのに、向井さんと同じマンションってだけでなんでもないんだからね」

昼休憩から総務に戻る途中、既に知れ渡っていた梶岡さんからの告白は、それをよく思ってない女子からすれ違い様に嫌味を言われ、仕事中も、あからさまな態度で接しられたのに、これ以上の厄介ごとはごめんだ。

出来上がったシチューをお皿に移し、カリカリのバケットを横に添えてテーブルに移動したあとを絵梨花がついてくる。

「だから、向井さんは彼氏じゃないの」

また、ポケットの中のスマホが連続してブーブーブッと鳴り誰だろうと、ポケットからスマホを出すと…ここでも私を悩ます人がいた。

でも、今は絵梨花の誤解を解く方が優先だから無視を決め込む。

「どうしたの?そんな難しい顔して⁈」

「ううん、なんでもない」

また、ポケットでブーブーブーとスマホが鳴り、もうっと、画面を見れば、やはり向井さんだった。