90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


「なにするんですか?」

目の前の男、向井さんを睨んだ。

「なにって、お前に聞きたいことがあるんだよ」

距離をつめてくるので後退すると、なぜかそこに用意されてたかのようなパイプ椅子があって座ってしまった。

それと同時に、上からパイプ椅子の背に両手をつき囲うように腰を屈める向井さんの顔が、すぐそこにあり、避けようがない。

「…近いです」

慌てふためく私の反応に、無表情というか不機嫌だった顔が、なぜか楽しそうに笑ってるのだ。

「また、キスされるかもって思ってるのか?」

図星を突かれ、ビクッと肩が揺れた。

「ま、ま、まさか…話を聞くだけなら、こんなに近寄る必要ないでしょ」

彼が目尻をひくつかせたまま笑う姿に、私は背筋に冷たい汗をかいていたまま、必死の抵抗で背を逸らすが、パイプ椅子の背もたれが邪魔をする。

「梶岡のことどう思ってるんだ?」

「どうって?困っているに決まってるじゃない」

「それなら、あいつに名前呼ばせてもいいのかよ」

ムスッとした不機嫌な顔で言われ、心底腹が立ってくる。

「さっきの私と梶岡さんの話をちゃんと聞いてました?私、名前を呼ばれる仲じゃないですし、周りに誤解を招く行動はやめてほしいって言ってましたよね」

「……だ、だったら、もっとはっきり断れ」

思い出そうとして彼は視線の先を上に向けた後、気まずそうに視線を逸らしていた。

「何度も断ってます。それなのに…名前呼びやめてくれなくて、聞き流してたら、今日、食堂で…あんな事…あー、もう、私、梶岡ファンに抹殺されますかね?」

「抹殺って…大袈裟」

プッと吹き出した彼だったが、私の必死な表情に笑うのをやめてくれた。