はぁーとため息をついた後、梶岡さんの勘違いを否定していないことに気がついた。
そうよ!
私、彼氏がいることになってる。
そう、そう…
ラブラブな彼氏がいる。
うん、彼女らも、ラブラブな彼氏持ちなら、敵認定しない気がする。
私は、梶岡さんの誤解を否定しないことで身の安全を守ると決めた。
絵梨花には、後で話を合わせてもらう事にして、梶岡さんには申し訳ないが嘘をつき通そう。
我ながらの解決案に気持ちは楽になり、もう一方の難題を片隅に置き去りにしたままトイレから出ると、待ちくたびれたように、腕を組んだ姿のまま無表情に壁に寄りかかり待ち構えていた人がいた。
思わず、このまま、またトイレに逆戻りしようと一歩後退した足がバランスを崩してしまい、倒れそうになった所を彼が手を差し出して助けてくれる。
「ほんと、どうしたらそんなに何回も転けそうになるんだ?」
訳がわからんと、首を捻り私を立たせてくれるが、掴んだ腕を離す気はないらしく、辺りを見回し、人の気配がない事を確認した後、地下にある、あまり使われていない倉庫代わりの部屋に連れて行かれる。そして今、ドアの前に立った彼に逃げ道を塞がれている状況にいる。


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
