数日ぶりに、社員食堂で絵梨花と楽しいランチを一緒に過ごしていたら、こちらに向かって笑みを浮かべて手を軽くふる人の横で、無表情のままこちらを見ている人に、胸が騒ついた。
「莉子ちゃん」
「なんですか?梶岡さん」
「見つけたから呼んだだけ…」
最近のもう一つの悩みのタネにため息が出た。
「用事がないなら、呼ばないでください」
社内のイケメンといえば、誰もが名前をあげる人物のうちの1人なのだから、女性達からの視線があると気をつかってほしいものだ。
「何食べてるの?」
「カニクリームコロッケの定食です」
「美味しそうだね!」
テーブルの横に立ったまま腰を少し屈め、あーんと口を開けて待っている梶岡さんよりも、彼の背後にいる人物が視界に入って、あの日のキスが鮮明に思い出されていく。
「…あげませんよ」
「冷たいな」
彼に会ったら文句を言ってやるんだと息巻いていたのに、いざ、会ってしまったらドキドキとして内心パニックって彼を凝視できず、それを誤魔化すように、梶岡さんのちょっかいに反応して、半分残っていた最後のカニクリームコロッケを食べた。
目の前の光景に、絵梨花が唖然とした顔で目配せしてきて、私も梶岡さんの行動が分からないと首を左右に振り返すので精一杯だった。


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