「じゃあ、出張でどこか行かれたら、ご当地の珍味を買ってきてください」

「珍味って…ほんとお前って面白いな…」

向井さんに、また、余計なことを言ってしまったと、落ち込む。

「じゃあ、おやすみなさい」

「…なぁお前さ、背、縮んだ?」

私、おやすみなさいって言ったよね。
今、そんな会話の流れだったけ?

「そんなわけないじゃないですか?。足元見てください…ヒール履いてないからです。てか、前にお邪魔した時もヒール履いてませんでしたけど」

「お前、ムキになるとすぐ顔に出るのな…」

「まさか、わざとですか?」

ニヤっと彼は笑ったので、わざとだったらしい。

「いじめっ子」

あなたは、クールで口数の少ない男じゃなかったんですか?

「いじめっ子って…幼稚な返しだな」

くやしい。
やっぱり、この人苦手だ。

「背が小さいから、普段はハイヒールを履くようにしてるんです」

クククっと笑いを噛み殺して笑う向井さんにムッと唇を尖らせ、「おやすみなさい」と、言い捨てて私はエレベーター使わず、足早に階段に向かった。

その途中、なぜかわからいが、スキップしている自分に気がついて、見られてるだろうかと振り返ったら、ドアは閉まっていたのでホッとしたのだ。