90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦

考えても考えても困惑するばかりで、はぁーと、ため息を吐いた私は、何かに集中したくてお風呂掃除をしだしたが、集中しすぎて蛇口にゴツんと頭部をぶつけてしまうというドジっぷりだった。

あーもう、なんだかな…と、しばらく頭を空っぽにするように宙を見つめていた。

休みの日にスマホを眺めながら歩いていたら、マンションの出口で人の気配を感じ、避けようと顔をあげた瞬間、顔面からぶつかり尻もちをつき痛みに顔を顰めた。

「すみません、大丈夫ですか?」

聞き覚えのある声に顔をあげると、向井さんだった。

そして、向井さんの白のニットについてしまったファンデーションを見つけ、自分のドジっぷりに呆れるばかりだ。

立ち上がり、頭を下げる。

「お洋服を汚してごめんなさい…出かける予定だったんですよね?」

「あー、コンビニまでな」

「そうなんですか?教えて頂けたら、私が、かわりにコンビニ行きますけど?」

「いーよ。自分で行くし、それよりスマホと尻大丈夫か?」

「大丈夫です。…あの、そのニット、弁償します」

「いーよ。服なんて洗えばいいし」

「でも、化粧なので、普通の洗剤じゃ落ちないと思います」

「落ちないなら、クリーニングにだすから、気にするな」