「…いやいや、意味わからないです」
「なら、わかるよーにしようか?」
腰をギュッと抱きしめられて、彼の顔が目の前に近づき、頬が熱くなる。
この距離は…ヤバイ。
「わ、わかりたくないので、遠慮します」
「残念…」
すっーと、腰の腕が解けた瞬間、私は、玄関ドアに背をへばりつけながら、ドアを開けた。
「お、じゃましましたー」
彼は手をふりながら笑う。
「またね、ももじりっこちゃん」
「…変な呼び方やめてください」
怒る私に彼の表情は真顔になった。
「今は見逃してやるよ」
訳がわからないけど、背筋にゾクリと冷や汗をかいた私は、慌てて彼の部屋を出た。
失礼なことを言いすぎたせいだろうか?
見逃してやるっていうことは、今度はないって事だ。
パンツ丸見えに始まってから、彼には、私のドジを披露してしまったし、愛想もなく、言いたい事はズバズバと言っていた。
可愛げのない女だと思われても、好意を寄せられる理由はないはずで、腰を抱く理由がわからない。
新たな嫌がらせで、こちらの反応を面白がっていたのだろうか?
なんだか呼吸が苦しくなり、マスクを外しても胸が苦しくて、よろよろとした足取りで部屋に戻った。


![(続編)ありきたりな恋の話ですが、忘れられない恋です[出産・育児編]](https://www.no-ichigo.jp/img/book-cover/1631187-thumb.jpg?t=20210301223334)
