90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


「…いやいや、意味わからないです」

「なら、わかるよーにしようか?」

腰をギュッと抱きしめられて、彼の顔が目の前に近づき、頬が熱くなる。

この距離は…ヤバイ。

「わ、わかりたくないので、遠慮します」

「残念…」

すっーと、腰の腕が解けた瞬間、私は、玄関ドアに背をへばりつけながら、ドアを開けた。

「お、じゃましましたー」

彼は手をふりながら笑う。

「またね、ももじりっこちゃん」

「…変な呼び方やめてください」

怒る私に彼の表情は真顔になった。

「今は見逃してやるよ」

訳がわからないけど、背筋にゾクリと冷や汗をかいた私は、慌てて彼の部屋を出た。

失礼なことを言いすぎたせいだろうか?
見逃してやるっていうことは、今度はないって事だ。

パンツ丸見えに始まってから、彼には、私のドジを披露してしまったし、愛想もなく、言いたい事はズバズバと言っていた。

可愛げのない女だと思われても、好意を寄せられる理由はないはずで、腰を抱く理由がわからない。

新たな嫌がらせで、こちらの反応を面白がっていたのだろうか?

なんだか呼吸が苦しくなり、マスクを外しても胸が苦しくて、よろよろとした足取りで部屋に戻った。