小野寺さんがわざと溢した件は確信してるらしいが、それ以上は、深く追求されないままマンションに着いていた。
「あっ、明日の何時ごろ、お帰りですか?」
何の話だと首を傾げる向井さん。
「明日、接待ゴルフで朝からいないんですよね⁈」
「あぁ、あれ嘘だ」
悪びれる様子もなく、エレベーターに乗り込んだので続いてついていく。
「嘘って…親睦会を楽しんできてくださいよ」
「あーいうの面倒くさいんだよ」
「面倒くさいって…世間一般の男性は美人が好きでしょ?」
「俺のタイプじゃない。お前は、俺の見た目に靡かないし、ずけずけ言うよな」
「興味ないんで」
「男いるのか?」
「いませんよ」
「へー」
なぜか詰め寄られ危機を感じた時、扉が開いた。
「残念、時間切れ」
慌ててエレベーターを降りた私の様子に、開ボタンをおしながら彼は苦笑している。
「俺の部屋601号室だから、明日カレー作ったら持ってこいよ」
そういいながら待ってくれていた荷物を出してきたので、奪うように受け取ったら、「警戒し過ぎだろ」と、笑っていた。
「ももじりっこのカレー、楽しみにしてるよ」
また…だとムカっとなる。
「もう、その変な呼び方やめてください」
「今朝の目に焼きついた桃尻にレースのパンツは忘れられないんだから、諦めろ」
「屁理屈言わないでください」
恥ずかしくて泣きそうになる私を見て、あははは、と笑って扉が閉まっていった。


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