90秒で始まる恋〜彼と彼女の攻防戦


小野寺さんがわざと溢した件は確信してるらしいが、それ以上は、深く追求されないままマンションに着いていた。

「あっ、明日の何時ごろ、お帰りですか?」

何の話だと首を傾げる向井さん。

「明日、接待ゴルフで朝からいないんですよね⁈」

「あぁ、あれ嘘だ」

悪びれる様子もなく、エレベーターに乗り込んだので続いてついていく。

「嘘って…親睦会を楽しんできてくださいよ」

「あーいうの面倒くさいんだよ」

「面倒くさいって…世間一般の男性は美人が好きでしょ?」

「俺のタイプじゃない。お前は、俺の見た目に靡かないし、ずけずけ言うよな」

「興味ないんで」

「男いるのか?」

「いませんよ」

「へー」

なぜか詰め寄られ危機を感じた時、扉が開いた。

「残念、時間切れ」

慌ててエレベーターを降りた私の様子に、開ボタンをおしながら彼は苦笑している。

「俺の部屋601号室だから、明日カレー作ったら持ってこいよ」

そういいながら待ってくれていた荷物を出してきたので、奪うように受け取ったら、「警戒し過ぎだろ」と、笑っていた。

「ももじりっこのカレー、楽しみにしてるよ」

また…だとムカっとなる。

「もう、その変な呼び方やめてください」

「今朝の目に焼きついた桃尻にレースのパンツは忘れられないんだから、諦めろ」

「屁理屈言わないでください」

恥ずかしくて泣きそうになる私を見て、あははは、と笑って扉が閉まっていった。